大カテゴリー「単独物質味」は、単独の物質が呈する味である。生理学的な研究が進んでいる分野でもある。
「単独物質味」は、3つの中カテゴリー「味覚性味」と「体性感覚性味」および「多感覚種性味」に分類している。「味覚性味」と「体性感覚性味」の分類は、カテゴリー名が示すように、物質が作用する受容体の種類に依っている。一方、「多感覚種性味」は、前2者と異なり、単独物質が複数の感覚種の受容体に作用するタイプの味である。
「味覚性味」は、2つの小カテゴリー「基本味」と「受容体確認味」に分類される。この分類は必ずしも合理的なものではない。「味覚性味」が具備するべき要件を満たしているのは「基本味」だけである。「基本味」をいちばん上に配置してあるのは、圧倒的によく知られている「基本味」と他の小カテゴリーの関係を理解し易くするためである。「受容体確認味」は、受容体は確認されているが味質は確認されていない味のカテゴリーである。したがって、将来「受容体確認味」は「味覚性味」に該当しないことが判明する可能性がある。とはいえ、その事実が立証されるまでは、挙げておくのが適切と考えている。
体性感覚は一般感覚で、下位感覚がある。「体性感覚性味」の小カテゴリーは、感覚の種類に基づいて「痛覚性味」と「温度感覚性味」に分類している。この分類により、辛味は痛覚性味であることがわかる。
「多感覚種性味」は、「触覚関与味」と「物質確認味」に分類している。「触覚関与味」が「触覚性味」となっていないことに注目して欲しい。たとえば、渋味は収斂味などと呼ばれる。しかしながら、渋味には苦味も関与していることが分かってきた。すなわち、渋味は収斂味(触覚)と苦味(味覚)の二つ(複数)の感覚種情報が統合された味である。「物質確認味」は、刺激物質は特定されているけれども、受容体が確認されていない味である。受容体は確認できなくても、物質的根拠はあるのだから無視できない。これらの味は欧米では古くから知られた味である。にもかかわらず受容体が見つからないのは、複数の感覚種が関与する味であることを強く示唆すると判断した。