味を「単独物質味」「複数物質味」「食品一括味」の3つの大カテゴリーに分類している。
「単独物質味」と「複数物質味」の違いは、カテゴリーの名称が示すように、関与する物質が一つか複数かである。「複数物質味」と「食品一括味」の違いは、「複数物質味」では特定できる(はずの)複数の物質が関与するのに対し、「食品一括味」では複雑系である食品のどの成分が関与するかを不問にしている。また、「複数物質味」は食品横断的に似た認識であるのに対し、「食品一括味」は食品毎に認識の内容がかなり異なる例も少なくない。
味の一覧表第4版では、味とみなす根拠として@生理学的根拠、A物質的根拠、B物体的根拠、C言語的根拠の4つを設定している。この視点でみると、「単独物質味」は生理学的根拠か物質的根拠のある味である。「複数物質味」は、この根拠にはよっていない。「食品一括味」は、物体的根拠か言語的根拠によっている。ただし、物体的根拠のある味は、「食品名+の型」だけに属する。そして、その一部である。なお、言語的根拠は全てのカテゴリーの味が対象になるので、「単独物質味」や「複数物質味」にも言語的根拠のある味が存在する。
ここで言及しておくべきことに、「単独物質味」と「複数物質味」の分類を「単独感覚味」と「複数感覚味」にできないかとの疑問がある。この分類が可能であれば、生理学的には理解し易い分類になる。しかし、「単独感覚味」にも渋味のように複数の感覚種が関与する味がある。このために、「単独物質味」と「複数物質味」に分類するのが妥当である。